悪人。


わたしは、妻夫木くんがあんまり好きじゃない。

彼は、日本のディカプリオ的な感じがする。
どこか、いいとこの坊ちゃん感が抜けない。

そんな印象が強かったので、
果たしてこの役が出来るのか、
と少々疑いながら見た。

田舎に住み、
両親代わりの祖父母の世話をする為に、
田舎から出て行けず、
ガテン系で働いているから女性とも出会えない、
そんな毎日の、退屈な日々が、
ひょっとしたら変わるのかもしれない、
自分と同じように、さみしい思いを抱えた人と出会えるかもしれない、
そういう気持ちで、
出会い系サイトに登録し、
「同年代の異性」と触れ合い、
現代との接点や、若者でいる自分を求め続けた、
不器用で世間知らずな「殺人犯」。

同僚の前で虚勢を張り、
親の前でも素直になれず、
嘘を吐き、
出会い系で売春まがいの行いを繰り返すにも関わらず、
「とてもしあわせな女」を演じ続けた、
孤独な「被害者」。

「殺人犯」の身内と、
「被害者」の身内。

厳格な母に育てられた、いいとこの坊ちゃん。
とりたてて取り柄もないくせに、
その育ちの環境の反動で、
上から見下す事でしかプライドを保てない、
「被害者の想い人」と、
その「友人」。

人生のすべてを、
同じ場所で過ごして来て、
どこにも動けなかった「女」と、
その恋模様。

深津さんと妻夫木くん演じる「孤独な」ふたりと、
岡田くんと満島さん演じる「高飛車な」ふたりは、
まるで鏡合わせのよう。

登場人物のすべてが、
ここでこの行動を起こさなければ、
あの時ああしていたら、という、
外れくじを引いていて、
外れくじが絡み合ってひとつの事件となった。

ほんの少しタイミングが違って、
ほんの少し状況が違えば、
事件にはならなかったのかもしれないし、
加害者と被害者は入れ替わっていたかもしれない。

この映画の中の人々を浅はかだと罵るのは簡単だ。

田舎に住んでいる人は、世界が狭い。
だから多くの若者は、
狭い世界から飛び出していく。
こんな所にいては、自分は経験を積めない、と。

じゃあ、
あらゆる事情で、
そこを出て行く選択が出来なかった人は、
負け組なのか。

田舎を飛び出した先で、
まわりとうまく馴染めず、
背伸びし続ける人は、
負け組なのか。

育ちのいい人は勝ち組か。

人を愛するという事は、どういう事か。

そういう事を深く考えさせられる映画だった。


俳優陣の演技のレベルの高さがすさまじいが、
その中でも、
妻夫木くん演じる
「田舎の、どこにでもいそうな不運な男」は、
とてもリアルだった。